「ゼロから始める竹竿作り」製作編その15(熱処理について補足)

前回記事コメントへの補足事項です。

オーブンの方式で大きく変わるとは思いますが、
20分かそれ以内で焼き入れしようとすれば温度を高めるしかありません、
ですが、そうすれば内部に熱が入る頃には表層が加熱過剰になりかねない危険もあります。

じゃあどうすればいいの?、ですが、
コメに書いたように、水分飛ばしをしてから比較的安全な温度で焼くのが良いと思います。

地域差や季節もありますが、竹材は思ったより水分を抱いてます、
海外ビルダーの焼き入れレシピが我が国で通用しないは湿度の違いもあると考えてます。

私の環境で、晒し竹を素のまま荒削りし熱処理した場合、
170から175℃で15分以上はオーブン内に蒸気が充満します、
大き目の排気穴が両端に4箇所開いていてその状態、
ですから、20分の処理時間では水分が飛ぶだけで終わる可能性があります。

実際のところ、マダケの場合で、
対面巾8mmのものは25分程度焼くことが多いですが、
管理したストックがないこともあり焼け具合はまちまちなのが現状です、
これは含水量の違いが影響してるかもしれません。
焦がしを入れることで誤魔化しが効くから良しとしてますがね。


さて、コメントにあった20分、に引っ張られて実証実験を。

ニクロム線による片面加熱、空隙最小、ガバッと片開きの異形オーブンで、

対面巾約8.5mmと9.5mmで44inchを一緒に120℃で、
電圧一定、50分過ぎからジワジワ温度上昇・・・ほぼ乾燥と思われる、

取り出して冷ましユルユルの糸を外し、順番を組み変えてから(気休めです)縛り直す、

173から175℃と変動するオーブンで、
8.5mmが20分(13分で反転し7分)、9.5mmが23分(15分で反転し8分)、

2日置いてから表皮を落とし脇を整えてみました、
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内部は淡いストローに変化、
削った節には、水分含んだままの加熱過剰で起きがちな黒染みが出てない、
削り屑を握り潰すと柔組織が粉にならず、ほのかに甘い焼き菓子みたいな香り、
少なくともヤキが廻った状態ではないですね、曲げても良い張りを感じます、
十二分に使えるんじゃないでしょうか。


面白そうだからこの手法で何本か試作してみるつもり、
安定が得られるなら1時間延長を許そうかな。なんて、・・参考まで。









「ゼロから始める竹竿作り」製作編その14(熱処理について)

目的はひとつなのに、人それぞれなのが熱処理で、
この難題を自信満々語ったら大炎上しかねないから先に逃げを打っておきます(笑)。
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先に解説したガストーチ焼きでも良い竿は作れます、
ただ、安定度を求めるならオーブン併用が望ましいのは確か。

で、そうなると自作、あるいはショップメイド品を購入し、
テストピースを何本も焼いてデータ作りをしなくてはなりません。

そこで迷うのが温度管理の問題です、いったい何度で何分が適正なのかってこと、
これが案外ヤヤこしい、細かいこと考えたら混乱必至なのですよ。
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竿を作るための熱処理って何なのかを、超初心者向け解説をしますと、
表カリカリ中もっちり、これに尽きる、
ので、パリッとして曲がり癖が付かない竿が欲しければ、
予め表層をできるだけ硬くする(焦げるほどの高温処理)、
内部は脱水縮合変化で十分、だから直火とオーブン併用。考え方として簡単でしょ。

竹の熱処理についてWeb上に文献が出てるからいちど目を通すとよいです、
その中では、強度劣化を起こさない処理温度は約150℃内外がよろしいとか、
水分が抜けた隙間は収縮し樹脂で固まり、諸特性が安定するようです。

ただし、これは木工材料としての実験データです、これで作ったら使えんでしょう、
単に水分が入り難いだけじゃ通用しないからね、釣り竿は。

1000℃にも達する炎でバーッと焼いたら表面は簡単に炭化(グラファイト化?)します、
加減が大事ですが、表層からコンマ数ミリ(1ミリ未満と思う)はガチガチになる、
そのように拵えた竹ならば、150~160℃位の中に1時間放り込んでおけば用が足りるということですね。
この方法なら失敗が少なく、初心者にもお勧めできます。

長時間はどうも・・な向きには170℃くらい。時間は半分、やや気を遣うけど。

とりあえず実験でも、と考えるならば、
余ってるロッドチューブのキャップを外して吹き流しの簡易オーブンにしましょう、
適当な断熱材を巻いておけばけっこう使えます、
ヒートガンは温度調整できるタイプがいいです。

入口出口で10数℃の温度差がありますが、処理温度も時間も大雑把なものです、
時々竹を反転させてやるだけ。オーブン一発焼きじゃないから気楽ですよ。

もう少ししっかりしたのが欲しくなったら二重式に改造しましょう、
温度差は殆ど無視できるくらいになるし、安全性ではいちばん。
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「ゼロから始める竹竿作り」製作編その13(竹のフェルール)

一体式のスリップオーバー竹フェルールは、
標準的な5インチピッチフォームではかなり制約を受ける、
のですが、2ピースなら苦労せずに作れます。

なので簡単なヒントだけ説明しますからあとは頑張ってください、
5,6回失敗すれば熟練の域に(笑)。

無改造の5インチフォームでフェルール前のスウェルを作る、
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曲げ易い後端を無理やり広げております、
厚み0.6mmフェルールの膨らみを作るだけでこの有様です、
スロープ長は4インチ(ベンドに影響出るデ)、
で、上に押しネジ挿入、入れなきゃここが無視できないほど細くなる、

じゃあ、押しネジ穴なんか開いてない5インチフォームでどうやったら?、

答えは隙間に詰め物をする、
シックネスゲージなど硬い金属板を差込んでから開くと良いです、
スロープ長2インチくらいまでは何とかなるでしょう。

そして接着の前には、
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ヒートガンを当てて少し曲げておく事をお勧めします、
完成したら、フェルール奥が微妙に広いって事にならないように、です。


小細工がイヤならロングスウェルで作る手もあり、
スリップオーバーのチューブラーロッドと同じ考え方です。

普段使ってるテーパーのラインと違ってくるから若干手探りが続くかもしれませんが、
一体竹フェルールを簡単かつスマートに決めるにはいちばんかも、と思います。

ロングスウェルはどんなもんかと試してみたところ、
2ピースはOK、3ピースはティップの曲がりが少しおかしいけど不通に使える、
4ピースの場合はティップと2番目の曲がり方がとてもコワい、ぜったい要改良、
だったことを報告しときます。
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試作品、スロープ長10インチのスリップオーバー。

フェルールの厚み、0.4, 0.5, 0.6mm、
3セクション共ベリーファーストでほぼストレートテーパー、
なのに見事なパラボリックアクションです。面白い。

ただ、無駄?に太い部分が多いためか先重り傾向が強い、
この方式を進めるなら部分的にでもホローが好ましいんじゃないかな。







「ゼロから始める竹竿作り」製作編その12(竹のフェルール)

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竹が0.5mm、カーボンブレード0.2mmで0.7mmちょっとの厚みになりました。

このままでも、竹のみの1mm厚+シルクラップよりタフですが、
念のため挿げ口に数ミリ巾のラッピングをしておきます、
これで竿の寿命が尽きるまで持つ(期待をこめて)ことでしょう。

ということで強度は確保しましたが、ひとつ問題が出てきました、
この雰囲気、無頓着な私でも「似合わんなぁ」と思う、
従って濃色塗料で塗り潰すことになります。

手持ちのカシュー透で仕上げましたがどうでしょう、
直射日光を浴びると模様が浮き出てイイ感じだと思いませんか。
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まだ試してはいませんが、
エポキシ用の顔料があれば接着段階から着色し、手早く仕上がることでしょう、
顔料の色は・・・赤だね。

故中村羽舟氏が始めた「和式」フライ竿ですが、
いつのまにやら、枝の末端には奇妙な実もぶらさがっております。

羽舟竿を観察したこともない者が作り方の解説するなんて・・・なのですが・・・。




「ゼロから始める竹竿作り」製作編その11(竹のフェルール)

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すだれ巻き手法の後付け竹フェルール、さてどのように処理しましょうか。

生成りシルクラップのヌーディーを愛でますか?、
それとも負担の大きな挿げ口をケブラやPEで巻きますか。

見た目重視ならそれも良し、この方式は何度でも作り替えできるからね、
ただしその場合は竹の厚さを増しましょう、
0.5mmは余りにも薄い、数回の使用で参っちゃうかもしれません。

フェルールのストレスって思うより大きいです、
釣りをしてると曲げと捩りが同時に掛かるのは普通のことで、
丸断面ならかなり逃げが効くけど、こいつは角が付いてるからヤバい。

糸巻き補強は押広げには強くても曲げと捩れが一緒にきたらとても弱い、
耐えるためには竹を厚くする以外にない、無骨になって当り前なんです。

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こんな便利なものを知ったのは無駄足掻きをずいぶん続けた後、
カーボンブレードのパイプ、悩める私には救世主でした、
フェルール破損の心配をする必要がなくなったのですから。

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膨らませて通し、軽く引き絞めフィットさせたら両端をテープ止め、
エポキシを満遍なく擦り込んでから表面を拭き取ります、
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熱収縮チューブを配置したら、
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火の中をぐりぐり通す、
接着剤が煮立つのが見えてコワくなるけビビッてはいけない。
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速攻でバケツに放り込み冷却する、でないとメンマができる(笑)、
焼き入れしてない竹を使う理由はここ、それなりに考えとります。

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加熱したエポキシは急速に硬化するので手早く不要部分を撤去し、
アルコールなどではみ出しをクリーニングします。
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そのまま硬化させても良いとは思いますが、
テープを強く巻いてダメ押しします、(捩れ防止でクロス巻き)、
微量ですが、余剰接着剤が出ます。

つづく